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南ドイツへ [ドイツ/シュツットガルト]

フォトグラファーの甲斐さんと雑誌の仕事で南ドイツに向かう。

午後1時に成田を離陸したルフトハンザは、約11時間のフライトの後、大きな満月を従えて夕刻のミュンヘンに到着。まだ午後6時過ぎなのに11月のドイツの空には既に光はなくて、真夜中にだけ現れる蛇が滑走路にとぐろを巻く。入国審査を終えてから乗り換えの飛行機までバスに乗り、駐機場から脚立のようなタラップを7段くらい上る。そこからはターボプロップの小型機でシュツットガルトまでの夜間飛行となる。機内は路線バスよりも狭い。プロペラ機の窓から眼下を窺うと、光る砂を散らしたような小さな光の塊が黒い大地に点々と連なり、小さな飛行機はいくつもの町を飛び越えていることが分かる。それらを結ぶ絶え間ない光の流れは、クルマのヘッドライトがアウトバーンをトレースしているのだろう。たぶん黒い森の上空を飛んでいるはずだ。約1時間のフライトだった。



シュツットガルト国際空港は何度も利用したことがある。だから異国に来たという気がしない。ドイツ語はほとんど分からないくせに、飛行場内に響くドイツ語のアナウンスさえ懐かしい。荷物を受け取り、空港から黄色いタクシーに乗って町の郊外にあるホテルを目指す。車窓を眺める気分は、大げさに言えば故郷に帰ってきた感じだ。実際にはたった1年間しか住んでいなかった。でも公私ともども本当にいろいろなことがあったから、ここで10年くらい過ごした気分なのだ。

ぼくが最初にシュツットガルトに来たのは1989年の冬で、この時は雪の森を抜けて西の丘に建つ小さな古城を目指した。アカデミア・シュロス・ソリチュードのフェローだった阿部雅世さんを訪ねるためだ。2回目に空港を降りたのは2003年の冬で、この時も前回と同じように西の丘の離宮ソリチュードまでタクシーで向かった。この時はぼく自身がフェローだったので誰かが待っているというわけではなかった。冬の夜の林道はクルマのライト以外は真っ暗で、辺りの様子はまったく分からない。シュタットアウトバーンから一般道に入り、かろうじて森の裂け目と分かる一車線の道路を進むと、途端に森が開けて、オレンジ色のアッパーライトに照らされる古城ソリチュードが眼に飛び込んでくる。実際は小ぢんまりとした建物なのだが、暗い道の先に煌煌と輝くソリチュードはとても大きく見えた。これが最初と二度目のシュツットガルト来訪の思い出だ。

ホテルの周辺は街外れの新興歓楽街で、通りには地球最後の日の翌日みたいにまったく人影がなく、映画セットの描き割りのような味気ないアメリカ風の建築物が何棟か身を寄せ合うように建っている。建物はカジノやアポロシアターやミュージカルの劇場で、ホテルが二軒あって、ぼくたちはその片方にチェックインした。ラスヴェガスでもつくろうとしたのだろうか。ホテルのレストランは閉店していたので、もう一つのホテルのダイニングに行くことにする。90年代の日本の郊外型ショッピングセンターにあったようなガジェットだらけのファミリーレストラン。吹き抜けの巨大な仕掛け時計から、午後10時にモーツアルト「魔笛」のアリアのメドレーが空々しく流れる。ここでビール以外はドイツらしくない無国籍な夕食を食べる。でもまずくはなかった。宿泊したホテルはキッチン&水回りとパーラーが分かれたスイートタイプ。部屋があまりに広過ぎて最初は落ち着かなかったが、その日は宿疲れですぐに眠りに落ちて、朝起きてみると大きな窓から芝生の広場を見渡すことができたので気分も晴れた。緑の芝に降りた霜が白く光っていて、朝もやに霞む静かな光景が広がり、ベルリンやミュンヘンやフランクフルトではなくて、南ドイツの緑豊かな小さな町に来ていることが嬉しかった。これから約一週間、南ドイツの5都市を巡る取材ツアーが始まる。空はどこまでも高い秋の青空で、冷たく乾いた空気も気持ち良い。温かい朝食とカプチーノ、冬のコートを着て最初のミーティングに向かう。町の中心まではタクシーで20分ほどだった。



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つかもとたろう

はしばさん。こんにちわ。
素敵です!冒頭の文章はCOLDPLAYの「the scientist」をBGMに読んでました。知ってますか?なんだか行きたくなりました。っていうか、来週からベルリン&ハンブルグなのですけどね。今回はベルリン郊外にある旧社会主義時代に使われていた建材(扉やガラス、照明や什器)の倉庫に行ってきます。
ちょっと橋場さんにも見てもらいたいです。帰ってきたらぜひ会いましょうね。写真に写っているのは月ですか?すてきです〜
ではまた。
by つかもとたろう (2006-11-16 18:27) 

橋場一男

つかもとさん、お久しぶりです。ベルリン&ハンブルグ、良いですねえ。寒いので防寒対策万全で。現地でアウターを買うならH&MでVIKTOR&ROLFのコートの購入をお薦め。なんと150ユーロくらいです。南ドイツは楽しかったですよ。帰国したら連絡ください。
by 橋場一男 (2006-11-17 16:07) 

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