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なぜぼくがドイツにいるのかと言うと…… [ドイツ/シュツットガルト]

今日は晴れました。雪の反射光がまぶしいくらいの晴天。こういう日はとにかく外出だ、と思い、外に出てみたら、太陽はさんさんと輝いているのに極寒でした。すごく寒いです。でも、ソリチュード宮殿の前は、そり遊びの子どもたちが……。晴れているので、遠くルードヴィヒスブルグの街まで見渡せます。それにしても、このあたりの風景は、本当に札幌に似ていると思う。

さて、なぜぼくがドイツにいるのかと言うと、それはこういう訳なんです。

シュツットガルトの中心地からバスで約30分、市の西の丘の上に建つ、18世紀、カール・オイゲン公爵によって建立された離宮ソリチュード。ぼくは、この建物の一部を使ったアーティストインレジデンスで暮らしています。


http://www.akademie-solitude.de/?l=e

このアーティストインレジデンスの中には、生活と制作に必要と思われる設備はだいたい揃っています。木とメタルのワークショップ、PCルーム、ビデオ編集室、暗室、ライブラリー、カフェテリア、エキシビションスペース、シアター、衛星TVルーム、ランドリー……等々。もちろん居住スペースも。ぼくの部屋は、約20平方メートルくらいの居室(ベッド、キチネット、収納、トイレ・シャワーなどの水回り)と、その2倍強のスタジオからなり、天井も高く、なかなか快適です(前にも書きましたが)。家具・食器付き。

ソリチュードでは2年に一度(毎年?)、フェローを公募しています。ぼくは一昨年末にここに応募して、翌年3月にメールで通知を受けました。もう少しちゃんとした通知があってよさそうなものですが、メールだけ。しかも、もらったメールのタイトルがドイツ語だったので、文字化けしていてウィルスメールと勘違いしたくらい。開けてみたら「2005年1月からのグラントが決まりました。早々にビザを取得し、必要書類を……」と。
応募には一応年齢制限があって、上限は36歳。でもぼくは42歳。既にここからして対象外。また、実際の締め切りは10月だったので、それも過ぎていました。しかもぼくが送ったアプリケーションはこれまで仕事をした日本語の雑誌の切り抜きをスクラップしたもの。一応簡単な英文サマリーを付け、デザイン・リサーチャー&エディターとしてデザイン部門で応募しました。ミラノの阿部雅世さんに手紙を書いていただき、経歴書を添付し、昨年のお正月明けに、会社の近くにある郵便から発送。

そんなぼくを選んでくれたのは、ザ・デザイナーズ・リパブリック(元?)のイアン・アンダーソン氏です。イアンがなぜぼくを……ますます分かりません。でも本当はすごく嬉しかった。自分の仕事を初めて客観的に評価されたわけですから。それも日本じゃなくヨーロッパで。本当に光栄なことです。というより編集者として、グラントをもらうのは前例がないような……。たぶん、これまでアプライした編集者はいなかったのでしょう。選ばれた時は、そんな物珍しさもプラスに作用したのかなと思いました。ただし、ここに来るためには、会社を辞めなければならないなど、それなりにリスクもあって、渡独を悩まなかったわけではありません。帰国したら44歳で、果たして仕事があるかどうかも心配でしたし。

でも結局、来てしまいました。それが今、ドイツにいる理由です。

こちらに来るための渡航費と荷物の発送費の一部はアカデミー持ち、さらに毎月、グラントとして1000ユーロを受け取ることができます。グラントの期間は1年間。その間、このソリチュードに滞在しながら、自分の研究や制作活動ができるわけです。加えて、制作に必要な予算や人手も、アカデミーが手配してくれます。展覧会もできます。こんなに恵まれた環境で制作をすると、あとで自分の国に帰ってから困ることがあるんじゃないかと思うくらい、至れり尽くせり。
ぼくはデザインの部門でグラントをもらっているので、公式にはデザイナーとして紹介されるのですが、実際には編集者ですから、デザイン・ライターとかデザイン・クリティックと自称しています。ここに来てすぐ、1月にディレクター面談があった時に言われたのは、「ここでの1年間、すべての時間は君自身だけのためにある」ということ。「自分の時間を自分のためだけに使えるんだぞ」。はあ、なるほど……でもよく考えると、それってすごいことだ。だから、今はひたらすら原稿を書いています。クライアントは自分です。

実はぼくは1997年に、ここに約10日間滞在したことがありました。その時はもちろんゲスト。ちょうど阿部雅世さんがソリチュードにいて、彼女を訪ねて来たわけです。「商店建築」という専門誌の仕事を辞め、これから何をしようか、再就職やフリーか、ぼんやり考えていた頃でした。ここでぼくは、現代美術作家の岩井成昭さんと知り合うことができて、ほかにも、ウガンダ人の詩人、カメルーンから来た舞台俳優・作家、カナダ人の映画監督、ハンガリーの美術作家、スイスの建築家、ドイツ・ミュンヘンの工業デザイナー、ロシア人演出家……など、わずか10日間で、多様な文化圏のさまざまな人々に出会えました。自分にしてみれば夢のような環境です。まさに毎日が旅の日々。こういうところに、自分もいつか来ることが……いや、やっぱり無理無理。そんなことを、帰りの飛行機の中で、何となく考えていました。

でも正直に言うと、自分はいつかここに帰ってくると信じていた。不思議ですが、きっとソリチュードに来ることができると思っていました。まあ、結果的にはその想いが実現したわけです。ここに来て、夢に怯まないことは大事なんだなと改めて思いました。もちろん、阿部さんの力添えが大きかったのは間違いないのですが。

午後、麓の駅からUバーンに乗り、そのままシュツットガルトまで出かけました。街の中心、シュロスプラッツの広場はこんな感じです。

駅でドルトムントまでの時刻表をもらい、その後は「マルクトハレ」で、スカモルツァ・アフミカーテ、フェタチーズ、バルサミコ酢、トマト、クルミを購入。ここのお店の人は本当にすごい美人。デニス・リチャーズに似てる。明日はスカモルツァとトマトのパスタをつくります(スカモルツァ・アフミカーテは、モッツアレラに似たチーズ、スカモルツァ・ビアンケをスモークしたもの)。ソースがきれいなピンク色になるスパゲッティ、しかもおいしい。

さらにインセンス、クルミ割り、ピーラー、雑誌数冊、食料品など、今日はかなりの出費でした。でも明日は3月分のグラントが出るし……。お腹が空いて、シュツットガルトの路上でバタープリッツエルを食べた。プリッツエルに塩バターを挟んだだけの超シンプルな食べ物。しかし、ドイツでいちばんうまい! と思った食べ物はこれでした。

帰りにアイグナーとバリーのウインドウをチェック。安い(日本より)。バスの待ち時間は、日本でもおなじみセガフレードに立ち寄りました。エスプレッソダブルで3.8ユーロというのは日本並みの値段だ。ここは高い。ドイツのセガフレードはお酒のメニューが豊富です(日本でもそう?)。


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@シン

今日のお話し、とても刺激になりました。
腑抜けて生きる自分に渇!
ありがとうございます。

スカモルツァとトマトのパスタ、
目にも、おいしそうですね。
(どっちのはなしや(笑)
by @シン (2005-03-01 07:19) 

akane

バタープリッツエルの写真見るたびに、ものすごく食べたくて仕方がないのです。
橋場さんの1日のブログの中で、一番目を引く内容。
バタープリッツエル。。。
いや、ちゃんと他のとこも読んでますよ。
でも、バタープリッツエルに勝る物はございませんね( *´艸`)
by akane (2005-03-01 09:47) 

ヒロ@七里ヶ浜

なるほどそういうことだったのですか。刺激になるお話ですね。
今月の末に、バーゼルフェアの出張のために、バーゼルに近い、南ドイツのフライブルクに滞在する予定です。
バターブリッツェルを食べてみましょう。
by ヒロ@七里ヶ浜 (2005-03-01 09:53) 

橋場一男

原宿の駅前にあるHiestand (ヒーシュタント)という
スイスのパン屋さんで売っている、ラウゲン・バターサンドは
バタープリッツエルに近い味のような気がする。
真っ白なバターがたっぷりはさみこまれてました。

フライブルクはシュツットガルトのすぐ近くの街ですが、
同じ名前のパン屋が楽天市場にあります。
http://www.rakuten.co.jp/brezel/574162/578234/
ここにもバターサンドという商品がありました。
by 橋場一男 (2005-03-01 18:49) 

ヒロ@七里ヶ浜

フライブルクの名物パンですって。情報をありがとうございました。
フライブルクでそのお店に行ってみます。楽しみが増えました。
by ヒロ@七里ヶ浜 (2005-03-01 22:02) 

YO

日記、興味深く拝読しています。どこかで岩井成昭さんのお名前を挙げておられるのをお見かけしたことが縁で、参りました。今いらっしゃるレジデンスも過去に岩井さんが滞在なさっていたところですね。岩井さんとは最近も広島でお仕事させていただきました。企業の公共空地に広島のための作品は当初1年の予定だったところが、企業側の方にいたく気に入られ、1年間、期間を延長し、今も展示されています。
by YO (2005-03-01 23:51) 

橋場一男

YOさん、こんにちは。
岩井さんにはいろいろと力になっていただきました。
広島市の作品は写真で拝見しましたよ。
昨年、アメリア・アレナスさんが来日した折、
岩井さんにインタビューの仕事をお願いしたこともあります。

ぼくの勝手な勘ですが、YOさんは美術館の方ですよね。
アメリアさんには直接会うことはできなかったのですが、
広島の美術館のプログラムについて、とても評価されていて
そちらにはいつか行ってみたいと思っていました。
広島というと、ぼくは謝琳さんのインスタレーションを思い出します。
これも写真でしか見ていないのですが。
確か謝琳さんのご主人はシュツットガルト出身でした。

勝手な推測で書いてしまい申し訳ないです。
by 橋場一男 (2005-03-02 00:29) 

りふぁ

はじめまして。
素敵な景色ですねー。懐かしいです。
あ、シュトゥットガルトには住んだことないのですが、お隣の国オーストリアに住んでいました。真っ白な雪に真っ青な空。このコントラストがなんともいえません。今は、こうして写真や、あとテレビでヨーロッパの風景を見ては想いを馳せています。

ブレッツェルおいしそうですぅ。
私の大好物なんですよね。パン屋さんではいつもラウゲンシュタンゲルを買ってました(ドイツでもこの呼び名なのかな?)。未だ、自分の住んでる近くでは見つけてなくて寂しいです。

新しい土地での新生活。ドイツ語・制作活動などがんばってくださいね!!
by りふぁ (2005-03-03 01:02) 

橋場一男

りふぁさん、こんにちは。どうもありがとう。
ラウゲンシュタンゲル、時々食べてますよ。
手に取るとずっしり重いですよね。そしておいしい。
あと、こちらでラウゲンクロワッサンというのも
見つけました。普通のクロワッサンより好きですね。
ラウゲン系のパンをたくさ食べるようになり、
最近は体臭までなんとなくパンの匂いに……。

ところでオーストリアでは何をされていたのですか?
ぼくはまだオーストリアには行ったことがないのですが、
そのうち旅行に出かけようと思っています。
by 橋場一男 (2005-03-03 01:43) 

りふぁ

ラウゲンクロワッサンって、ラウゲンの生地でクロワッサンの形をしてるのかしら?ウィーンでは、たまーにラウゲンセンメル(ドイツでの発音はゼンメルかしら)というのがありました。形がSemmelなのです。

オーストリアでは学生してました。7年ほど。
とーってもいい街ですよ。古さに程よく新しさが混じってて。
ヨーロッパにいる間にいろぉぉんなとこ行けるからいいですね。
私は、長年住んでたくせに、いつでも行けると思ってると結局行きたいとこすべては行けませんでした。後悔。
思い立ったらすぐ行動!!ですね。

あ、お誕生日おめでとうございます(お誕生日つながりです)。
素敵な一年を。
by りふぁ (2005-03-03 08:27) 

橋場一男

誕生日が同じ! おめでとうございます。
シュツットガルトも夜の1時を回り、3月3日です。
誕生日って何歳になっても、なんだか嬉しいです。

ラウゲンクロワッサンは、察しの通りクロワッサンの
形をしていて、中味もクロワッサンなんですが、
表面がラウゲン処理されているのか、茶褐色で
プリッツエルと同じ香りがします。小さいわりに
ずっしりしていて、バターもたっぷりで、一個で食事が
済んでしまうくらい。こちらはパンが本当においしいですね。

ウィーンには絶対に行こうと思っていますよ。
面白い情報があれば教えてください。
ここから深夜バスも出ているんですが、それよりスロバキアの
ブラチスラバ空港まで、東欧の航空会社の飛行機で行き、
そこから陸路で入るのが良いのかなと考えています。
SKYEUROPEで39ユーロでした。初夏に行こうと思います。
http://www.skyeurope.com/start.php?lang=en
by 橋場一男 (2005-03-03 08:51) 

りふぁ

それは安いですね~。
スロバキアからウィーンまでだと列車で1時間くらいと聞いています。
そっちの方が楽でしょうね。バスだと12~3時間くらいかかるのかしら?
夏はいい時期ですよ。冬から初夏にかけての季節とても好きでした。
街路樹とかが知らぬ間に一気に緑をつけてたりするんですよね。
もしかしたら4月に行くかもなので、また何か情報あったら書き込みますね。
何か特別知りたいこととかあったら言ってくださいね!!
by りふぁ (2005-03-06 05:47) 

橋場一男

りふぁさん、ありがとうございます。
お言葉に甘えて、旅行前にはいろいろと
相談させていただくかも知れません。

ぼくは、ウィーン工房の時代のモノが好きなんですよ。
すっごく高かったけど、アウガルテンやロブマイヤは
どうしても欲しくて、一客ずつ使っていました。
(ロブマイヤのグラスはいただきものでしたが)。
北欧やほかの西ヨーロッパのデザインとは違う、
どこか日本的で繊細な、洗練された佇まいが好きでした。
ガラスは木のように柔らかく、陶磁器は石のように凛として。
だからぼくが抱いているウィーンのイメージは、
まさにアウガルテンとロブマイヤ、そしてトーネットの
曲げ木のロッキングチェアのイメージです。
by 橋場一男 (2005-03-06 07:39) 

ANN

はじめましてこんにちは。
ドイツのresidenceに興味があって調べていたらこのブログに出会えました〜:)
来年の夏にEuropeに制作&発表しに行こうと思っているのですが、行き先を考え中で・・・。ドイツは写真が有名なイメージがありますが、どうなのでしょうか・・・???ドイツ人の友達も、絵画系よりも写真の方がたくさん見かけるかもしれないと言っているのですが。。。

面白いのでまた来させてもらいますね。。。!!!
by ANN (2007-10-19 14:38) 

橋場一男

ANNさん、はじめまして。
ぼくがいたSolitudeは写真家は一人もいなかったですよ。ドイツ人のフェローは作家、グラフィックデザイナー、映画監督、建築家、あとはファインアートの作家でした。
良いプログラムに出合えるといいですね。ドイツはホントに暮らしやすいし、安全だし、信頼できる人が多いので、良いと思いますよ。
by 橋場一男 (2007-10-22 20:47) 

ANN

そうなんですか?わかりました、ありがとうございます!もう少ししらべてみようと思います。***
ん〜プロデュースやキュレーションを勉強できるプログラムを提供しているところってどこかご存知ですか・・・??探し中なのです。。。
橋場さんは現在なにしてらっしゃるんですか〜???
いろいろ聞かせてください〜
また来ます*
by ANN (2007-11-01 02:53) 

橋場一男

プロデュースやキュレーションだと、勉強というよりは実践ですね。Solitudeにもキュレーターのフェローがいて、ほかの作家の展覧会の制作を手掛けていました。一人は近くの美術館に勤務しながら、レジデンスに滞在していました。各国、各施設のプログラムは国際文化基金のウェブサイトで調べるのが良いと思います。

ちなみに私はフリーランスのライターです。
by 橋場一男 (2007-11-04 17:50) 

ANN

なるほど〜ありがとうございます。もっといろいろ調べてみようと思います!
今年はとりあえず日本で理論を勉強します。今年って言ってもあとわずかだけど・・・。つぎは海外で実践的なキュレーションを学びたいですね〜(*^^*)
いろいろ良い刺激になりました〜ありがとうございました!
私の主宰するグループの展覧会が来年もあるのでもし興味がわいたらいらしてください〜
by ANN (2007-11-21 09:52) 

橋場一男

展覧会の情報、ぜひ教えてください。
ぼくも今、来年開催予定の展覧会のお手伝いをしています。
by 橋場一男 (2007-12-09 02:24) 

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