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店番中のルイジ・コラーニに会う。 [デザイン/建築]

バーデンバーデンの3日目、チェックアウトの日です。日曜日はホテルの朝食が11時までなので、とりあえず10時にレストランに行くと、既に片付け中。「えー!?」と文句を言うと、今日からサマータイムが始まって1時間早くなっていたんですね。知りませんでした。というわけで時計を1時間戻して行動再開。朝食はホテルの方が気を利かせてくれて、コンチネンタルスタイルのブレックファースト一式をわざわざ用意してくれました。

ホテルを出てからしばらく街を散策しました。まず有名なパティスリー&カフェ「ケーニッヒ」(左)。市内最古の菓子店。街を歩いていると、フランス風カフェとイタリア風カフェが向かい合う不思議な光景(右)も目にしました。「カフェ ド パリ」の前に「カフェ ラ スカラ」。節操がないと言えば節操がない。さすが国際的な保養地です。

バーデンバーデンはナポレオンの影響でフランス色も濃いという話をウェブで読んだことがあります。確かにシュツットガルトとはぜんぜん違う。でも、どこか見覚えのある風景です。どこだろう。帰りの電車でずっと考えていて、ふと思いついたのは「東京ディズニーランド」。昨夜バレエを見終えてホテルまで帰る途中は、岐阜県の飛騨高山の町並みを思い出していました。通りに沿って清流があり、川の匂いと森の匂いが、高山を連想させたのだと思います。

さて、帰りはバーデンバーデンからカールスルーエまでSバーンに乗り、カールスルーエからシュツットガルトまでICで帰る計画。ちなみに往路はストラスブルク行きのEURO CITY(ドイツ語だとオイロシティ)です。カールスルーエは駅前がなぜか動物園。駅にはドイツ表現主義の画家マックス・ベックマン展の大きなポスターがあり、せっかくなので州立美術館を目指して散歩してみました。あいにくの雨ですが、もとより傘は差さないほうだし、坊主頭だと雨も気にならないので、動物園の脇道をそのままずんずん歩きます。途中、気になるクルマを発見。すごい。ベンツの古いダンプトラック。生まれて初めてベンツが欲しくなりました(左)。さらに奇妙なトラックが。これはルイジ・コラーニのトラックでは……。

美術館があるマルクト広場に行く途中、国際会議場のホールで、ルイジ・コラーニ Luigi Colaniの回顧展が行われていました。これはとりあえず見ておこう……。さきほどのトラックもたぶん展示品だったようです。会場はかなりゆるーい感じで、展示品もホコリがかぶったままだったり、キャプションのプレートもバラバラになんとなくぶら下がっているという感じ。しかし、しかしですね、展示品はもう本当にすごかった。というよりすご過ぎる。コラーニ見直した。コラーニはデザイナーとしてはかなり水際立った人なので、たいていはデザイン界の異端児扱い。「まあ、コラーニだからしょうがないや」みたいな微妙な立ち位置にいる印象があって、ぼく自身、デザイナーというよりは変わった造形作家という捉え方でした(でも実際にはすごい数のデザインワークをこなしているけど)。でもですね、今回、コラーニのクルマや飛行機のモックアップ(原寸!)を見て本当に見直しました。すごい人ですわ。日本の現代美術作家で人気がある中村哲也氏の作品が、ヒヨッコの小技に見えてしまう。コラーニのデザインはそれくらいすんごかったです。この人は50年代からカーデザインをやっていたんだ。年季も違うんだな。それに、千代の富士の彫刻までつくっていたとは……。いちばんたまげたのは京都駅のコンペに出した案と思われる模型。まいった。

そして何よりいちばん驚いたのは、グッズ売り場の店番やってるのコラーニ本人だ!

お客さんがいない時は、黙々とジョイスティックのモックアップを削っていました。ちゃんと自分でつくるんだね。図録を買うと、さらさらとサインまでしてくれた。いやー、本当に面白かった。ぼくにとってはマックス・ベックマンより良かったかも。しかも本人までいるなんて。予想外の展開でした。それにしてももう少しきれいに展示すれば良いのに。どうしてあんなに雑なんだろう。それが無念だ。

表に出ると、ホールの前にかなり派手に改造したシルバーのフォードKAが一台。後ろに回るとColani KAというエンブレムがあった。さては自分で改造した、おそらくコラーニ本人のクルマだと思われる。中を覗くと、あー、かなり汚い。フロアに小銭がばらばら散らばっていて、読みかけの新聞がぐちゃぐちゃに押し込まれていた。そしてなぜかカミソリが一本。石膏の粉らしきものも散らばっている。ひょっとすると車内でも何か削っているのではないだろうか。コラーニ恐るべし。常に何かを削っている人なのだろう。

「だってさ、ボーイングがつくると飛行機はみんな同じ形になっちゃうだろ」。店番しながらたぶん、そんな事を言っていたようだ。でも保守的な工業デザインに、一石を投じる使命感に燃えているわけではなく、自分の想像力に逆らえないんだろうな。頭の良さそうな工業デザインの世界で毛穴開きっぱなしのデザインは、無視されるか変人扱いされるだけですが、コラーニが信じていることは美しい。たとえ空を飛ばない飛行機であったとしても。美術作家の中村哲也は、デザイナーのコラーニを超えられるのだろうか。

今回のチケットのデザインもかなりイカレています。スキャナがあれば……。

カールスルーエからシュツットガルトに向かうICに乗ったのは夜7時。夏時間前なら8時になるところ。それでもまだ空は明るかった。電車に乗ってしばらく行くと、雨雲の隙間から夕日が覗いて、東側の山際にぼんやりとした大きな虹を映していた。ぼくは東京で虹を見た記憶がない。20年以上暮らして一度も見なかった。東京で仕事をしていた数年間、なぜか12月上旬に仕事が一段落することが多くて、そんな時はとりあえずサイパン島に出かけていました。近くて安いし。最近はいろんなお店ができて、少しグアム島みたになったようですが、以前はぜんぜん洗練されていなくて、鄙びた海辺の街に来たみたいで、田舎育ちには気が楽だった。12月のサイパンではよく虹を見ました。夕方、洗濯物を抱えてコインランドリーに行く途中、きまってスコールが来て、そんな時には虹の端から端までくっきり見えた。あの茹だるように暑い夕暮れ時を思い出したのは、虹だけじゃなく、ちょっと疲れた気怠い感じのせいでした。

やがて日没とともに虹は消えて、ぼくの小旅行も終わりました。

Colani

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  • 出版社/メーカー: Thames and Hudson Ltd
  • 発売日: 2004/10/18
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Colani - Back in Japan

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コメント 12

akane

コラーニという人すら知りませんが、写真を見て笑ってしまいました。
しかも本人が店番中ってっっっ!!!
楽しい小旅行になりましたか?
by akane (2005-03-28 21:59) 

いとうちおり

うわー、すげえです、コラーニ(笑)。
私も接客なんてしないで、会場で模型作ろう。いいなー、すごいなー。
by いとうちおり (2005-03-29 02:45) 

橋場一男

コラーニって80年代、日本でもかなり人気があって、
しばらく日本に滞在してキヤノンやソニー、JRのデザインの
仕事をしていたんですよ。30代以上のちょっとデザインに
詳しい人なら、みんな知っているはず。風貌もご覧の通り
かなり個性的なので。ぼくも一目で分かりましたから。

しかし展示がねえ。クルマのモックアップなんかホコリだらけで
金鳥サッサがあれば、ぼくが掃除するのに、と思いました。
でもね、そのホコリを指でなぞり、誰かが落書きしているんですが、
どうもコラーニ本人なんだよね。ちょっとしたスケッチやサインが、
ホコリをかぶったベンツの試作車のボンネットに……
(さすがに本人の前だったので写真が撮れなかったけど)。
それを見た瞬間、なんだか微笑ましくなり、ホコリまみれの作品も
なんとも思わなくなりました。きっとそういう人なんだな。
コラーニ本人が一回り大きく見えましたよ。
調べてみると、どうやらカールスルーエに仕事場があるようです。

それより初のトラックバック、ホントにありがとうございます。
とても嬉しいのだけど、この後どうしたら良いのか分からない……。
誰か教えてください。
by 橋場一男 (2005-03-29 07:50) 

パラダイス山元

すんげー
店番してるなんて・・・
学生だった頃、来日した際、本にサインしてもらいました。
うれしかったなぁ〜
by パラダイス山元 (2005-05-06 19:30) 

橋場一男

すんげー! 山元さんだ。
本というのはカースタイリングの増刊号ですか?

マン盆栽の影響で、ぼくもプライザーのフィギュアを買うようになり、パーティー料理の飾り付けに使っていました。マッシュポテトの山を登る登山隊とか、プリンの島で昼寝する水着女性とか。
by 橋場一男 (2005-05-07 02:08) 

パラダイス山元

正解です。カースタイリングの別冊です。
小さい頃から、けっこうモニョムニョした造形を
していたので、学生の頃は
類似コラーニとも呼ばれていました。

マッシュポテトの山を登って遭難した人が、
飲み込まれてしまったらタイヘンですよね。
by パラダイス山元 (2005-05-07 19:21) 

橋場一男

類似コラーニに爆笑。ぼくはコラーニのデザインしたモノのモックアップを見たのは初めてだったので、本当にびっくりしましたよ。本人がこりこりモデルを削っているのも驚きましたが。若い男の子がスケッチブックを持ってずっとクルマをスケッチしていて、それをコラーニ氏に見せようと待っていたのに、顔なじみらしい中年男性と、内容はよく分かりませんが、仲間内の長い世間話を始めてしまい、どうしたものか、おろおろする青年を見て、こういう人はどこの国にもいるのだなと思いました。
マッシュポテトの登山隊のフィギュアもそうですが、みんな勝手にお土産に持ち帰っちゃうんですよ。だから後片付けの時には、どうでもいいフィギュアしか残っていません。たぶんみんな、一個50円くらいだと思っているのではないだろうか。料理にフィギュアを合わせるのも、なんだか箱庭療法みたいで、癒されたり、予期せぬ自分を発見したり、面白かったです。ちなみに、みんな「マン盆栽」のこと知ってましたよ。
by 橋場一男 (2005-05-08 07:07) 

いとうちおり

すんげー!山元さんだ。
マッシュポテトの山を登る人って「未知との遭遇」のお父さんですか。
なんだかここ、北海道県人会みたいですね(ちなみに私も札美行ってました)。
by いとうちおり (2005-05-09 20:44) 

橋場一男

山になるくらいマッシュポテトをつくるのが大変なんですよー。ぼくは雪印のインスタントのやつを使っちゃったけど。北海道は県人会? それとも道人会って言うんでしょうか。
by 橋場一男 (2005-05-10 08:00) 

じゅんこ。

はじめまして。
今年の「ドイツ年」の一環で、D-HAUSというイベントのキャンペーンをしているものです。
ちょうど、コラーニ氏のレーシングカーが今D-HAUS(東京・広尾)に展示されていて、今日のブログにコラーニ氏のことをかいたので、ここでみつけてビックリです。
コラーニ氏にお会いになったんですね(笑)。
そのコラーニ氏、11月5日土曜日に、D-HAUSに来場なさいます。

これを、氏を知っている方や興味があるかたに広めたくて、コメントさせていただきました!

個人のブログではありますが、D-HAUSを紹介していますので、ぜひ、のぞきにきてください☆

http://blog.goo.ne.jp/junkointhemood/d/20051101
by じゅんこ。 (2005-11-01 21:17) 

橋場一男

じゅんこさん、はじめまして。「日本ドイツ年」は盛り上がっていますか? ドイツってどちらかというと男子ネタが多くて、若い女性が好むようなモノが少ないから、ちょっと心配していました。D-HAUSは面白そうですね。しかもコラーニ氏来日とは……。じゅんこさんのブログにもあったクルマはホントにカッコいいです。
by 橋場一男 (2005-11-02 00:22) 

info@colani.org


luigi colani design museum

www.colani.org


##
by info@colani.org (2008-11-02 07:36) 

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